沿線の達人/大槻忠男さん(ハチ博士):街はぴライター 投稿記事

沿線の達人/大槻忠男さん(ハチ博士)
【暮らし】【全線】
後尾明子」さんによって書かれた記事です。  
八王子市に、「ハチ博士」と呼ばれる人がいることをご存じですか?
今回ご紹介する達人、大槻忠男さんがまさにその人。
八王子市役所で24年間住民からのハチ駆除の相談を受け、4000個以上の蜂の巣を駆除し、市役所を退職後の現在も自らハチの研究を続けています。

そのハチの知識を現役の市職員がまとめた「教えて『ハチ博士』」という冊子は、刷り上がるや否やあっという間に皆が持って帰ってなくなってしまうという、人気フリーペーパーにも負けない話題沸騰ぶり。八王子だけでなく、日本全国から問い合わせが入るほど注目されている「博士」なのです。

●鳴り響く市民からの相談電話に対応し、蜂の駆除を続けて24年

大槻さんが市役所でハチ駆除と関わるようになったのは1972年のことでした。その頃の八王子市は多摩ニュータウンの開発が始まったばかりで、年間に来る駆除の依頼はたったの2件だったのだとか。
しかし、次の年には相談件数が急増。5年後になると相談件数は年間800件ほどに膨れ上がります。それまで山を切り拓いた宅地開発によって、山で活動していたスズメバチが、民家の軒先に巣を作るようになったが原因だったのだそうです。

実は、八王子市役所で「教えて『ハチ博士』」を発行することに至った事情とは、大槻さんが市役所を退職した後、現在の担当者が市民からのハチについての相談件数に驚いたからというのも理由のひとつ。「もっと皆さんにハチについて正しい知識を知ってもらおう」ということで、市職員が大槻さんの自宅に何度も足を運び、その知識を1冊の冊子にまとめたのです。
今では相談件数は年間1400件ほどあり、7~9月のハチの活動が活発になる時期は午前中ずっと電話が鳴り続けるというのですから、確かにこのような冊子を作っておかないと体がいくつあっても足りないのでしょうね。

●ハチ防護服ができるまでの、壮絶な戦い

このように市民の方から相談を受け、場合によっては駆除に出かけていた大槻さん。ハチ駆除で一番苦労したことは、駆除を始めた当初は防護服というものがなかったことなのだそうです。
「1972年に最初に駆除に行ったときは、長靴をはき、ビニール袋を頭からすっぽりかぶって、軍手をはめて出かけたんですよ。しかし、2回目に出かけるときにこれではやりにくいなあということで、ビニール袋に穴をあけたのですが、そうしたら穴からハチが中に入ってくるんですよね」

仕方がないので今度は養蜂家の方から網で顔の部分を防護した帽子を借りて、オオスズメバチ駆除に挑戦することに。
「このオオスズメバチというのが4.5cmの大きさで、しかも頭が石頭! 合羽や帽子に体当たりしてくると痛くて痛くて…。そして顔面の前の編み目にハチがたかって針を突き出し、毒液をビュンビュン飛ばしてくるんです。毒液が目にしみて、目があけられないから手当たり次第に殺虫剤を吹く。それで這いずるように人家まで下りていって目を洗い、また戦う…。そんな苦労が1年ほど続きました」

このままではまずいということで、業者と相談し、ハチの防護服を開発することに。しかし、しばらくは実際に作業してみてもどこかで不具合が見つかり、試行錯誤して完全なものを作り上げるのに10年かかったのだとか。
「完全な防護服が出来上がる間には、ハチに刺されて意識を失ったり、救急車で運ばれたりと色々ありましたよ」

現在市役所では、原則として市民からの要請に応じて市役所の職員が出向き、ハチの巣を駆除することはなくなりました。しかし、自分でハチの巣を取り除くことができるよう、この完全な防護服を市が貸し出しているそうです。
今でこそハチ駆除の専門業者ができ、防護服もあたりまえのように存在しているようなイメージがありますが、もとはといえば大槻さんのハチとの戦いの結晶だったのですね。

●9月はハチがイライラしている季節

さて、大槻さんのもとには現在も遠足を控えた学校関係者などから「今年はハチが多く出ますか?」「今の時期はハチはどのような状態ですか?」などといった問い合わせが入ります。そんな大槻さん曰く、9月はまさにハチの被害件数が一番多い時期なのだとか。それは一体なぜなのでしょうか?
「ちょうど8月の終わりにオスバチが誕生し、ハチのエサがどんどんなくなっていくのです。そしてこの季節になると、そろそろ冬越しの準備にも入らなければいけない。だから働きバチは苛立っているんですよ」

暑さもそろそろひと段落。連休の多い9月は、山にレジャーに行く方も多いと思いますが、自然が豊富な山だからこそ、ハチの被害に遭う人も多いのだとか。その中でも、特に被害に遭いがちなのが子どもたちなのだそうです。
「山で開放的な気分になった子どもたちがハチを刺激するんです。あたりを走り回って知らず知らずのうちに蜂の巣を揺すったり、木のうろに作られたハチの巣に向かって石を投げたり棒でつついたりする。また、薮の中に入ってしまって、ハチの巣に近付くこともある。これらに反撃する働きバチによって刺されてしまうんです」

ハチは刺激さえしなければむやみに人を刺すことはない、というのが大槻さんの持論。刺されるのを避けるためには、ちゃんとコツがあるのだとか。
「基本的に巣のまわりでは、常に働きバチが1~2匹で旋回して見張りをしています。ここでもし、巣から10メートル以内に近付くと、この見張り役のハチが近くまでやってきて、羽音をたてたり、アゴをカチカチとならしたりして警告を行うんです。それも無視してさらに刺激すると、一斉に働きバチが巣の中から出てきて攻撃を始めるんですよ」
この、警告の段階でやってしまいがちなのが、近寄ってきたハチを手で振払うこと。これはハチが自分達への攻撃と受け取ってしまい、大変危険なのだそうです。心を落ち着け、じっとしてゆっくりと後ずさりしながら巣から離れるのが刺されないためのコツなのだとか。

●過度に恐れなければ大丈夫

とはいえ、ハチは警告を行わずにいきなり刺してくる場合もあります。
「女性の化粧品や香水の匂いを感知すると、ハチは即座に興奮して、警告を行わずにいきなり攻撃してきます。以前、女性の悲鳴が上がったので駆けつけてみると、ハチが女性のパーマがかかった髪の中に入り込んで、もがいているんです。ここで女性も気が動転して無理矢理追い払おうとします。するとハチはますます興奮して刺してくるんです。こうなるととてもやっかいですよね」
聞いているだけで背筋が寒くなってきますよね。
だからこそ、山に入るときはハチを刺激しない服装をすることは必須です。大槻さん曰く、基本的にはヒラヒラしたスカートや短パン、サンダルなどを避け、長袖長ズボンを着用することが好ましいのだとか。また、ハチが攻撃する色である黒、青、赤は避け、できる限り白っぽい色の服を身につけたほうがよいそうです。
それでも運悪く刺されてしまったら、まずは刺された箇所を爪や指などで押し、毒と血を絞り出します。そして10~15分ほど患部を冷水で冷やし、安静にしておくことが大切。万一じんましんや発熱、嘔吐などといった全身症状が出てくるようなら、すぐに病院へ行ったほうがよいそうです。

と、ここまで注意を促してきましたが、何度も言う通りハチはむやみに刺激しなければ攻撃してこないもの。
「ハチだって攻撃する時は死ぬつもりで突進するわけですから、できれば無益な戦いはしたくないと思っているんですよ」
だからこそ、ハチの生態をよく知っておくことは、レジャーを楽しむ秘訣でもあるということなのでしょう。「教えて『ハチ博士』」の冊子にはハチの生態や、上手に共存していくためのコツが丁寧に解説されています。下記の八王子市役所のURLからも閲覧することができるので、お出かけ前に目を通してみてはいかがでしょうか?
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ハチ対策の冊子「教えて『ハチ博士』」に関する
問い合わせ先は…
八王子市役所 環境部 環境保全課
住所:
〒192-0351
東京都八王子市元本郷町3-24-1
URL:
https://www.city.hachioji.tokyo.jp/
seikatsu/7312/006601.html
京王八王子駅よりバスで15分
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掲載日付:2008/09/03
沿線ライター:後尾明子さん
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