京王相模原沿線に広がる多摩ニュータウン。新興住宅地やショッピングセンターが立ち並び、開発され尽くしたイメージがありますが、まだまだ昔ながらの農家が点在しています。
今回紹介する、コヤタ農園もそのひとつ。
このコヤタ農園のオーナーである小谷田直人さんのお仕事の様子をうかがいました。
●多種多様な野菜や花を育てて直売する
コヤタ農園では、さまざまな作物を生産しています。この季節に収穫できるものだけでもざっと挙げると、トマト、ナス、パプリカ、オクラ、モロヘイヤ、ゴーヤー、ジャガイモ、玉ねぎ、マリーゴールドなど、実に多種多様。これだけ多くのものを少しずつ作って、農園の直営販売所で売るのがコヤタ農園の運営方針なのです。
多品種を少量ずつ生産するという方針は、手間がかかって必ずしも効率がよいものではありませんが、作物の病気や害虫の発生を減らす効果があります。
ひとつのものを沢山作ると、どうしてもその作物が好きな害虫が集まり、被害が拡大する恐れも出てきます。
そこで、7月頃に出荷するマリーゴールドは、商品とは別にダイコンを作る畑に植え付けます。それは、マリーゴールドは根や葉に含まれる成分が大根につくセンチュウという害虫を駆除するのに役立つから。こうすれば農薬の使用量を減らすことができるのです。
また、竹やぶの竹をキュウリなどのつる性植物を支える竹ざおとして活用することも。結果として地球や人にやさしい方法なのかもしれませんね。
こうやってできたとれたて野菜が安い値段で手に入れられるということで、近隣の住民や、レストラン関係者がコヤタ農園の野菜を買いにやって来ます。直売所に置かれたさまざまな野菜の中で、特におすすめのものは何なのでしょうか?
「私のおすすめは、黒豆の枝豆です。収穫期は9月頃ですが、味が濃く、甘くて実においしいです。枝豆というのは新鮮さが命なので、スーパーなどのお店ではなかなか入手できないんですよ」
とはいえ、この黒豆の枝豆、収穫されるとすぐに売り切れてしまうことも。この農園の作物の固定ファンがいることがうかがえますね。
ほかには、コヤタ農園では珍しい野菜の栽培をすることもあります。そのひとつが、近頃健康食品として注目されている新顔野菜のヤーコン。あっさりした甘みが特徴の芋です。
「ヤーコンは、そもそも20年ほど前の国内に入って間もない頃に、東京都の農業普及センターの方が私の両親に『育ててみないか』ということで持ってこられたんです。ただ、作ったはいいけれど、誰も食べ方を知らず買ってくれないので、せっかくできても近所の方におすそわけするしか方法がない時期が長く続きました」
それでも、珍しい作物なので、コヤタ農園では種を絶やさないよう細々と育て続けてきました。そして、当時システムエンジニアだった小谷田さんは、この作物のことをホームページを作って紹介したのです。
「ちょうど2000年頃にメディアで新顔野菜として取り上げられて、ホームページを見た人からの電話やメールが殺到したんです。そこでようやく一般の方が買ってくれるようになったんですよ」
ちなみにこのヤーコン、小谷田さん曰く生のままサラダで食べるのがおいしいとのこと。また、天ぷらとかキンピラなどにするのもよいようです。
「ヤーコンを買ってくれたお客さんから、こんな料理にするとおいしかったという情報をいただき、新たな魅力を再発見することがあります。だからこそ、野菜を買いに来てくれるお客さんとのコミュニケーションは本当に大切にしたいですね」
●システムエンジニアから農業へ
このようにさまざまな作物を育てているコヤタ農園のオーナー、小谷田直人さんは、代々続くコヤタ農園の跡を継いで6年目。それまではシステムエンジニアとして会社勤めをして働いていました。「いつかは自分が農園を継ぐことになるけれど、それは定年後のことかなあ…」と漠然と考えていたところ、折しも不況で会社では早期退職制度が導入されることに。いつかは会社を辞めて農家を継がなければいけないのなら、今が良い機会かもしれないと、思いきって農業一本で暮らす道を選んだのだそうです。
いざ、農業に専念した小谷田さん。会社員時代と違って苦労したところは、なんといっても肉体的に大変なところでした。
「子どもの頃から農作業を手伝っていたので、始めるにあたって特に不安に思うことはありませんでした。しかし、それでも初めのうちは筋肉痛や腰痛などで、体中が痛かったことを覚えています。それまで仕事で使う労力といえば、せいぜいパソコンに向かってキーボードを打つくらいだったので、始めた当初はしゃがむだけでもきつかったんですよ」
●自然を相手にする農業という仕事
また、使う筋肉だけではなく、生活リズムもがらりと変わったようです。
「朝は夏だと5時前から7時の朝食までにひと仕事。朝食後は昼まで仕事をし、陽射しの一番強い昼から2時間ほどは休憩します。そのあとは夕方日が暮れるまで働いていますね」
まさに日の出から日の入りまでが働く時間。特に夏は陽射しが強く、気温が高いのに加え、労働時間も長くなるので、実に過酷な季節です。
「夏は雑草や害虫が盛んに発生するので、駆除が大変です。夏野菜の収穫の時期にもあたりますし…。また、4月頃も日はそれほど長くありませんが、植えつけの時期なので慌ただしいものです」
この、農作物の植え付けというものは特に緊張を強いられる作業のようです。
「農業のシビアなところは、野菜によっては種まきや定植などといった作業を決められた時期までに終わらせておかないと、絶対に作物が育ってくれないということなんです。たとえば会社勤めだと、仕事が少し遅れても、自分自身の力で挽回することが可能ですが、植物にはそれが全く通用しません」
仮にきちんと計画通り進めようとしていても、人の力ではどうしようもない要素で予定通りにいかないことは多々あります。たとえば白菜の種まきや定植をしようにも、ちょうどその時期悪天候が続いたら、なかなか作業がはかどらないもの。それでもその時期を逃すと思うように発芽・成長してくれないのが植物相手のシビアさというわけなのです。
たとえ予定通りに作物を植え、ぬかりなく作業を行っても、天候によって思うように成長してくれないことがあります。もしせっかく育っても、害虫の大発生で作物が食べられてしまうことも。自然を相手にするということは、予定通りにはいかないものなのです。
「相手が自然だと文句言っても仕方がありませんから、逆にあきらめがつきますけどね。農業を始めてから物事に対する心の持ちようが変わったことは確かです」
●家族連れに大人気の芋掘り・タケノコ掘りイベント
さて、小谷田さんは、積極的にイベントを企画しています。というのも、お客さんと積極的にかかわりたいという思いがあるから。さまざまなイベントを企画するきっかけになったのは、もともと先代から行われていたタケノコ掘りにやってくるお客さんからの「畑に植わっているジャガイモを掘りたい!」というリクエストでした。そこでジャガイモ掘りを行う?と、今度はその隣で栽培されている里芋にも注目が集まり、「あれも掘りたい」という声に応えて、里芋掘りも行うことになったのだそうです。
「ジャガイモは、掘りたての新じゃがと、掘って保存したものでは固さや風味が違います。だからこそ、掘りたてが食べられるジャガイモ掘りはイベントとして成り立つんですよね。しかし、里芋は掘ってから半年間保存した物でも味が劣化しないというすぐれもの。里芋掘りをしたところで掘りたてならではのおいしさを味わえるメリットはないんです。ですから、イベントを行ってもお客さんは喜んでくれるのか半信半疑だったんですよね」
しかし、いざ実施してみるとこれが好評でした。土に触れること自体を喜ぶお客さんは多く、子どもに普段目にする野菜がどのような形で生えているのかを見せたいという親御さんも数多く足を運んでくれたのです。
「まったく予想もしない盛況ぶりで、いい意味で裏切られました。このようにお客さんの視点を教えてもらえるのが、イベントを行うメリットだと思います」
これからはまさに里芋の収穫期。10月になったら足を延ばして家族や友人同士で芋掘りを体験してみてはいかがでしょうか?
汗を流して掘りあげた里芋の味はきっと格別なはずです。
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コヤタ農園
住所:
〒192-0351
東京都八王子市東中野1171
URL:http://www.koyatan.com/
京王堀之内駅よりバスで7分
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掲載日付:2008/08/20