沿線の達人/林慶二郎さん(高尾ビジターセンター 解説員):街はぴライター 投稿記事

沿線の達人/林慶二郎さん(高尾ビジターセンター 解説員)
【暮らし】【全線】
後尾明子」さんによって書かれた記事です。  
京王線で行ける日帰りハイキングスポットとして人気の高尾山。気持のよい汗をかきながら山を登りきると、山頂では絶景とともにビジターセンターが出迎えてくれます。
この高尾ビジターセンターでは、高尾山の自然に関する展示が行われ、実際に自然と触れ合うガイドウォークも開催されています。
ここで解説員を務めているのが、今回の達人としてご紹介する林慶二郎さんです。


●日課は高尾山登山

林さんが解説員になったのは今から3年前。もともと自然が好きだということもあり、専門学校で野生生物の生態や調査方法などについて学んだ後、この仕事につきました。
ビジターセンターは山頂にあるので、林さんは必然的に毎日高尾山を登山しなければなりません。毎朝ケーブルカーに乗り、その後片道40分近くかけて山頂まで登るのです。
通勤途中は、登山道のパトロールを行い、倒木がないか、道が崩れていないか、訪れる人たちの安全に関わる個所をチェックしていきます。

その他にも、高尾山の自然の変化をつぶさに観察し、記録していくことも大切な仕事。今日は何の花が咲いたのか、どんな木の実が落ちていたのか、そしてどんな鳥が鳴いていたのかなどといったことを、ひとつ一つ調査していくのです。
落ちていた木の実や葉などは、一部ビジターセンターに持ち帰り、展示することも。また、夏はビジターセンターに泊まり、早朝にどの鳥が鳴き始めたか調査する「鳴き出し調査」というものを行うこともあるそうです。

ビジターセンター内で来館者に展示物の解説をしたり、ガイドウォークやスライドショーなどのプログラムを行ったあと、16時にはビジターセンターが閉園します。帰りは、また40分近く歩いたあと、ケーブルカーを使って下山します。
これだけ山歩きを繰り返すと、かなり足腰が鍛えられそうですね。

●高尾山の自然を五感で感じてもらうための努力

ビジターセンターでは、毎日の調査で拾ってきた木の実や葉などを展示するのはもちろんですが、調査結果を手書きのイラスト入りニュースレターにまとめるのも仕事のひとつです。
特にイラストは、どれも図鑑のように精緻なタッチ。動植物の様子がよくわかると同時に、イラストならではの温かみが醸し出されています。山歩きだけでなく、精緻なイラストまで描かなければいけないのだから、解説員の仕事は幅広い才能を必要とするんですね。

もちろん展示を行うだけでなく、来館者に対して解説をすることも欠かせません。
「とにかく高尾山に来る方には、ここの自然を、五感を使って感じてもらいたいんです。特に、動植物を見たり、鳴き声を聞いたりするだけでなく、落ちている木の葉や実を実際に触ったり、においを嗅いだりしてみて欲しいんです。それだけでも山歩きがぐんと充実するんですよね」

ちなみに、ビジターセンターに来館する人は、自然に興味があってやってくる人もいれば、単にトイレを借りに来る人も多いのだとか。特に、ゴールデンウィークなどの行楽シーズンには、ビジターセンターはトイレ目的で訪れる人が殺到し、30分待ちの行列ができるのだそうです。そこで、階段を下りて地下のトイレまで並ぶ人に向けて、階段のところにもさまざまな展示を行い、並んでいる間も飽きさせず、自然に関心を持ってもらうようにしています。
「こういった方々が展示を見て、帰り道にもっと周囲の自然に注意して歩いてもらえれば本望ですよ」

●落下物から読み取る生活者の息吹

林さんは、ビジターセンターで毎日行われるガイドウォークの解説も行います。山頂の周囲を取り囲むようなハイキングロードの5号路を来館者に案内しながら、50分ほどかけて高尾山の自然を紹介していくのです。

実際に5号路を案内してもらうと、林さんは、落ちている葉を手に取りお話をしてくれました。
「このクヌギの葉は、食べられたあとがあります。虫食いにしては大きいと思いませんか? しかも青いうちに地面に落ちている。これは、虫ではなくムササビのしわざです。クヌギの木は、ほかのナラの木に比べて芽吹きが遅いので、新芽を好んで食べるムササビのこの時期の格好の餌なんですよ」
確かに触ってみると、ほかに落ちているクヌギの葉と比べて、ムササビに食べられたクヌギの葉は青くてみずみずしいのです。これはただ歩いているだけでは気づきません。実際に拾って触ってみないとわからないことです。

見た目と手触りから、ここまでの推測ができてしまうとは驚きです。達人は観光客が山歩きをしていてもなかなか気付かない、山の生活者の息吹を決して見逃すことはないのです。
「散策路の看板には、ムササビがいることが書かれているので、ついつい探してみたくなってしまうでしょう? でも、彼らは夜行性なのでなかなか私たちの前には姿を現しません。そんなとき、食べ残しが落ちていると、『ああ、昨日の晩もここに来たんだなあ』なんていうことが想像できるんです。そんなものを探しながら歩くと、山歩きがもっと楽しくなりますよね」

実は、ビジターセンターでは毎日行うガイドウォークだけでなく、さまざまなイベントも企画しています。ターゲットはさまざまで、親子で体験できるものもあれば、外国人向け、中高年向けのものもあるのだとか。
これからの季節は、夜の高尾山を解説員と歩く「ナイトウォーク」を行うそうです。興味があれば夏休みの思い出に参加してみるのも楽しそうですね。

●これからの見どころは虫のパワーバランス

高尾山の自然のすばらしさを人々に伝えるため、日々自然解説を行う林さん。林さんが思う、高尾山の魅力とはどのようなものでしょうか?
「この山は標高がたったの599mです。そして市街地からもほど近い位置にある。その割には動植物の種類が大変豊富なんですよ」

季節ごとに見られる生き物が違うので、いつ訪れても違った表情を見せる高尾山。これからの季節の見どころは、樹液に集まる昆虫類だそうです。
実は高尾山の山頂広場から見やすい位置に、樹液がしみ出ている木があり、ここにさまざまな昆虫が集まってくるのだとか。これを見ると、特に子どもは大喜びするようです。
「樹液にたくさんの虫が集まっているのを見るだけでもワクワクするものですが、よく観察すると意外な力関係がわかり面白いんです。たとえばハチとチョウでは、一見ハチのほうが強そうに見えますよね。しかし、樹液に集まるオオムラサキというチョウが羽を広げて威嚇すると、ハチのほうが逃げることもあるんですよ」

ちなみに、この季節は山歩きでハチに襲われる危険もあるのだそうです。夏であっても半そでは避け、ハチが寄ってきやすい黒い色の服を避けることが大切なんだそうですよ。
夏休みはいよいよ折り返し地点を迎えました。
今年の夏の思い出に、ちょっと足を伸ばして自然を満喫してみてはいかがでしょうか?

information=======================================
東京都高尾ビジターセンター
住所:
〒193-0844
東京都八王子市高尾町2176
URL:http://www2.ocn.ne.jp/takao-vc/
京王線高尾山口駅下車徒歩5分、
ケーブルカー乗り継ぎ高尾山駅下車徒歩約40分

<プログラム>
「スライドショー」…約15分
時間:平日11:30~、14:30
   休日10:30~、11:30~、14:30~
「ガイドウォーク」…約50分
時間:毎日13:00~
※ご注意
諸般の事情により、日程が予告なく変わる場合がございます。
※休館日:第三月曜日(祝日の場合はその翌日)年末年始
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掲載日付:2008/08/06
沿線ライター:後尾明子さん
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