八王子市の丘陵地に、知る人ぞ知る広大な植物園があることを御存じですか?
それが東京薬科大学内にある薬用植物園。
ここは桜の名所で有名な平山城址公園の敷地に隣接する形で存在し、東京都ではもっとも広い面積を誇る薬用植物園なのです。
この薬用植物園の園長をつとめる、竹谷孝一さんが今回の「達人」です(写真-上)。
●生の薬草を見ることができる、貴重な植物園
今回の達人、竹谷さんは薬用植物園の園長であると同時に、東京薬科大学の教授でもあります。薬用植物園の園長は、普段薬草の研究をしている教授が代々兼務してきたポストなのだそうです。
というのも、この薬用植物園は主に学生に薬草が実際に生えているところを見てもらうことが目的で設立されたもの。そもそもほとんどの薬は薬草の有効成分を抽出したものなのですが、実験室にこもっていると、粉状になっている薬や、せいぜい乾燥やカット後の薬草くらいしか目にすることはできません。だからこそ薬草のありのままの姿を見ておくという経験は、学生にとって非常に大切なことなのです。
そして、生の薬草を見ておく経験が役に立つのは、何も薬学を勉強する学生だけではありません。私たち一般人も薬草の知識を身につけておいたほうがよいと達人は語ります。
「たとえば、山菜のシーズンになるとよく話題になるトリカブトという毒草は、ニリンソウという植物と非常に似ているんです。これを間違って食べてしまい、中毒になるパターンが多いんですよ。しかし百聞は一見にしかずで、本物を見ておけばこのような失敗を防ぐ確率が高くなるでしょうね」
薬用植物園では、東京薬科大学の学生だけでなく一般人にも公開しています。また、春と秋の年2回一般向けに公開講座も開かれ、専門家による講演と解説付きの植物園見学をすることができます。この公開講座は非常に人気で、毎回100人~200人の参加者で溢れかえるのだとか。いかに薬草に興味を持っている人が多いのかがうかがえますね。
●薬草の知識がなくても楽しめる
さて、今回の取材では実際竹谷さんに植物園を案内していただきました。一般に大学の薬用植物園と聞いてイメージするのは、珍しい地味な植物が淡々と展示されているような小難しい場所といったところだと思うのですが、実際に足を運ぶと大違い。普段から健康食品でよく聞く植物、花壇でお馴染みの美しい花々が展示されており、とても親しみやすい印象を受けました。
豪勢な花をつける牡丹の根が女性の更年期障害の薬に使われることは新たな発見でしたし、蚊取り線香でおなじみの除虫菊が鮮やかな花を咲かせていたのは意外な感じでした(写真-下)。
薬草が畑に植えられている見本園、熱帯植物を展示している温室だけでなく、緑豊かな丘陵地も植物園の敷地内にあるので、歩いて回って見飽きることはありません。
このような薬用植物園で竹谷さんは園長として、訪問者がいかに楽しめるか、そして植物が元気に育ってきちんと展示されているかということに気を配っています。
「植物の一番よく育つ条件はさまざまです。日陰を好む植物がいれば、寒さが苦手な植物もいます。幸いこの植物園は丘陵地の傾斜と本来の植生を活かして、比較的バリエーション豊かな植物の生育条件をつくり出すことはできるのですが、それでも外国由来の薬草を展示するのが難しいときがありますね」
たとえば、胃腸薬などで使うダイオウという珍しい高山植物をぜひとも展示したいと考えた竹谷さんをはじめとする植物園のスタッフは、展示のためにある設備を新たに作りました。
「高山植物が東京で育たないのはなぜかと考えたときに、夏期に地熱が高すぎるのではないかという考えに行き当たったんですよ。そこでダイオウを栽培している場所だけ囲って、井戸水を下から流して土を冷やして試験的に栽培しているんです」
その試みが今のところは成功しているようで、2~3mまで大きく育ったダイオウの姿は見事なもの。この夏を乗り切れるかどうかが気になるところです。
この記事には続き(後編)があります。
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東京薬科大学薬用植物園
住所:
〒192-0392
東京都八王子市堀之内1432-1
URL:
http://www.toyaku.ac.jp/plant/
平山城址公園駅または京王堀之内駅よりバスで8分
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掲載日付:2008/06/18