園内には多種多様な植物が植栽されており、四季折々の花が楽しめます。
この、神代植物公園で園芸の仕事に携わる齋藤功さんが、今回の達人です(写真-中)。
●植物が好きで園芸ひとすじ
齋藤さんが今の仕事についた理由は、植物に接して四季を感じたいという思いから。もともと山が好きで、子どもの頃はオリエンテーリングやクロスカントリーなどをしながら自然に親しんできたのだそうです。園芸の仕事に就いてから20年、都内のさまざまな公園の管理を経て、1年前に神代植物公園にやって来ました。
そんな齋藤さんの普段の業務は、植物に水をやり、必要に応じて消毒や施肥(せひ)、剪定(せんてい)、植え替えを行うことです。しかし、神代植物公園での仕事は、今までの公園管理の仕事とは勝手が違うので、最初のうちは戸惑ったのだそうです。
「それまでは、すでに生えている木々の剪定をしたり、余分な落ち葉を掃除したりすることがメインの業務でした。でも、ここでは新しく植物を植えて、きちんと育てていかなければいけません。求められる知識も違いますから、毎日が勉強ですね」
緑豊かな公園は都内にたくさんありますが、都立の植物園の数は多くはありません。お客さんに美しい花々を見てもらうためにも、植物園での仕事にはさまざまな苦労が隠されていそうですね。
●大輪のダリアを咲かせるために四苦八苦
齋藤さんがメインで担当しているのがダリアの栽培です。ダリアは毎年初夏から秋口にかけてダイナミックな大輪の花を咲かせ、品種によって色や大きさもさまざま。ダリア園に植えられたたくさんの品種を一つひとつ見比べるのは、とても楽しいものです。
ダリア栽培の1年は、春に球根を植えることから始まります。夏の開花に向けて成長を手助けし、花が終わる晩秋には球根を掘り上げます。5℃以下になると球根が腐ってしまうので、地下2mくらいの穴の中に入れ、上から藁をかけて保温を心がけながら越冬させるのです(写真-下)。
このような栽培のノウハウを頭に入れていても、いざ栽培してみるとさまざまなハプニングが起こってしまうのが、生き物相手の仕事のようです。
「去年は夏の猛暑のせいでダリアが弱ってしまい、夏の間は思うように咲いてくれませんでした。おまけに虫が大量に発生して、花を食べられてしまって・・・。虫を駆除したくても、お客さんが歩くところにあまり多くの殺虫剤を撒くわけにもいきません。ですから、手で土をほじくって、地面に潜んでいる虫をつまみ出したこともありました。その苦労のおかげか、秋にはちゃんと咲いてくれたのでほっとしましたよ」
せっかく手塩にかけて育てた花が、虫によって無惨にも食べられてしまうのは、さぞかし悔しいものでしょう。避けられないものとはいえ、天候によって植物がうまく育たないというのも残念な話です。
「現場というものは本から得た知識だけではカバーできないほど、いろいろなハプニングが起こるものなんですね。植物のちょっとしたサインを見逃さず、何を求めているのか瞬時に判断して的確な処置をしなければ、植物は枯れてしまいます。植物園ではお客さんに美しく咲き誇る花を見てもらわなければ意味がありませんから、ものすごいプレッシャーです」
そんな齋藤さんの仕事のやりがいは、お客さんの声。
「ダリア園の近くで作業をしているときに、お客さんがダリアを見て『きれいね・・・』と言っているのを聞くと、それはそれはうれしいものですよ」
毎日の苦労は、お客さんの一声だけでもずいぶんと報われるものなんですね。
1年間ダリアの栽培に携わった齋藤さんですが、まだまだ分からないことがたくさんあるといいます。
「この仕事は数年やっても未知の部分があるのではないでしょうか。一生をかけて腰を据えて同じ植物に向き合わないと、本当に奥深いところまでは行き着けないのかもしれません。まだまだ自分は勉強不足です」
植物と接して20年のベテランの齋藤さんなのにこのコメント。植物とうまく関わっていくためには、なんと気の遠くなるような時間が必要なのでしょうか。
この記事には続き(後編)があります。
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掲載日付:2008/05/07