高幡不動駅のある日野市には、かつては「日野宿」と呼ばれた甲州街道の宿場町がありました。宿場町には、一般の旅人向けの宿だけでなく、参勤交代の藩主など高い身分の人が宿泊する「本陣」という宿があり、通常はその地方の名主の屋敷がその役割を担ってきたのです。
日野市では、この日野宿本陣の建物を修復し、一般公開しています(写真-上)。ここで、観光客向けにガイドを務めている中村美智子さんが、今回の「達人」です(写真-中)。
●新選組発祥の地である日野の気風とは
現存する日野宿本陣の建物は、幕末期の日野宿の名主、佐藤彦五郎によって1864年に建てられました。江戸時代の貴重な建築様式が保存されているということだけでなく、幕末の重要な史跡だということも日野宿本陣の大きな魅力です。
というのも、この場所は新選組発祥の地のひとつ。佐藤彦五郎は、あの新選組の「鬼の副長」である土方歳三の義兄なのです。
幕府の直轄地で裕福な農民が多い日野では、農民であっても教育に熱心な気風がありました。ですから、学問はもちろんのこと、武術も身につけようということで、佐藤彦五郎は日野宿本陣の敷地内に剣術の道場を建てたのです。そこにのちの新選組局長となる、天然理心流宗家の近藤勇が剣術の出稽古のために来たことから、のちに新選組の幹部となる仲間たちが集まるようになったのです。
「日野という場所は、甲州街道沿いということもあって、江戸の最新ニュースがまっ先に届きました。例えば、桜田門外の変が起こったとき、そのニュースは当日の晩には日野に届いたんだそうです。きっと土方歳三たちは、この本陣のいろり端で日本の将来について真剣に議論し、自分達でより良い国にしようと思ったんじゃないでしょうか」
のちに明治時代に入って、日野から自由民権運動が生まれたということも考えると、先進的な発想を育む風土があったに違いありません。
そして勉強熱心で誇り高い日野の気風を物語る証拠に、さまざまな民家の蔵から古文書がたくさん出てくるのだとか。
日野の市民は、こういった史跡や古文書を大切に保存しようという意識が高く、日野宿本陣に限らず、この地には新選組関連の史跡が多数点在するのです。
●歴史好きが高じてガイドに
今回の達人である中村さんも、日野の歴史に魅せられた一人です。
もともと大学で国文学を専攻していたこともあり、古文書や漢詩が大好きだったという中村さん。数年前に日野市でガイドを募集していることを知り、それに応募。半年間日野市の歴史を学びガイドになりました。
2004年にNHKの大河ドラマ「新選組!」が放送されると、「新選組フェスタ」が開催され、中村さんも市内の史跡や博物館での手伝いをしました。
そしてフェスタ終了後に、日野宿本陣で観光客に向けてガイドをすることになったというわけなのです。
日野宿本陣を訪れるお客さんに、中村さんはだいたい15分程度の時間をかけて、建物内を案内していきます。建物の各部屋の説明だけでなく、建築様式や新選組関連の歴史的エピソードも解説しなければいけないのですから、ガイドを務めるためには相当の知識を要求されます。
「ここに来て、日野の歴史のことを少しでも分かっていただけたらいいですよね。15~20分程度で一周できてしまう日野宿本陣ですが、時間をかけてじっくり見てほしいと思います。また、こちらが一方的に話すだけではなく、お客さまとの会話やふれあいを大切にしていきたいですね」
中村さんは、お客さまとの一期一会を大事にしたいと考えているそうです。
お客さまとのコミュニケーションは、実はガイドの仕事に役立つことも多いのだとか。その様子は、後半で詳しくお話することにしましょう。
この記事には続き(後編)があります。
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日野宿本陣
〒191-0011
東京都日野市日野本町2-15-9
URL:
http://www.shinsenhino.com/shinsengumi/
arcs/0210_honjin/
京王線高幡不動駅より日野駅行きのバスで15分
京王線高幡不動駅より多摩モノレール線に乗り換え
甲州街道駅下車徒歩15分
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掲載日付:2008/03/05