京王八王子駅から徒歩15分ほどの住宅地に、今回の達人である大蔵國宜さん(写真-上)が営む「大蔵木工所」があります。
もとは長野県の木曽地方にあった大蔵木工所ですが、先代から八王子の地に移り、大蔵さんで5代目になるのだとか。
この木工所で大蔵さんは、電動のろくろを使って木を削り、太鼓のバチやバインダーなどといった木製の日用品のほか、「東京こけし」という民芸品を作っているのです(写真-中)。
●えっ!? 一本の木からこんな姿が?
「こけし」と聞いて思い浮かべるのは、長い円筒状の胴体の上に丸い頭が乗った、木製の人形の姿ではないでしょうか。しかし、東京こけしは、「東京」とつくだけあって、このような東北地方のこけしとは姿形が大きく違います。
なだらかな曲線美を描く胴体からキュッとしまった首もと、そしてその上に大きな髷を結った小さな顔が乗っているのが特徴なのです。なにより目をひくのが、通称「ハピネスリング」と呼ばれる首輪。その姿を見ると、「どうやって輪を首にかけたの?」と、思わず首をひねってしまいます。
実は、この複雑な東京こけしは、1本の木から約3分で彫り出されるというのだから驚きです。
実際、大蔵さんが作業をする姿を見せていただきましたが、角材がまるで生き物のように姿を変える様子に目は釘付け。特に首輪が胴体から切り離される瞬間には、思わず歓声を上げてしまいました(写真-下)。
これだけ繊細な細工なのにも関わらず、材料の角材には一切目印となる下書きをしません。すべて達人の感覚だけで彫り進んでいくのです。
「1体を彫り出すのはすぐにできるんで、まわりからは『じゃあ1日何百個も作れるんじゃないの?』と言われるんだけど、せいぜい1日30~50体くらいが限度だな。あまり根をつめると疲れてきちゃって、首輪を彫り出せなくなったりするんだよ」
確かに、あれだけ複雑な作業をしようと思ったら、かなりの集中力が必要なのでしょうね。
●みんなで作り上げた東京こけし
さて、東京こけしは、企画も制作も大蔵さんオリジナルのものです。東京こけし誕生は、約30年前にさかのぼります。
当時林業を振興させたいという森林組合からの依頼で、お祭りに出店してろくろを回し、お客さんのリクエストに応じてこけしを彫った、実演販売からはじまるのです。
「せっかく東京でこけしを彫るんだから、東北地方のこけしとは違った形のユニークなものを作ろうってことになってね。大きな髷も、首輪も、花の模様もすべてお客さんからのリクエストをもとに試行錯誤したわけよ」
そしてできあがったこけしが新聞で取り上げられ、そのときに記者によって「東京こけし」と命名されたことで、八王子の新たな民芸品が誕生したというわけなのです。
「本当は八王子こけしにしろと言われたこともあったんだけど、当時は八王子っていう地名はマイナーで、ピンと来る人が少なかったんだよね。でも、『東京こけし』なら日本だけでなく、世界にも通用するからね」
さまざまな人の意見を集めて現在の形が出来上がった東京こけし。
今も毎年11月に開催される高尾山もみじ祭では実演販売を行い、ときにはお客さんのリクエストに合わせて首輪を2本にしてみたりするのだとか。絵つけには時間がかかるので実演販売では行わないのですが、一本の木から東京こけしが出来上がる様子に感動するお客さんも多く、店の前には常に人だかりができるのだそうです。
なお、東京こけしは自宅に飾るために購入するお客さんだけでなく、誰かにあげるために買っていくリピーターも多いのが特徴です。特に、海外に住む親戚や友人にプレゼントすると喜ばれることも多いのだとか。
「東京こけしはトム・クルーズの居間においてあるのが自慢だよ。トム・クルーズが『ラスト・サムライ』の記者会見のために来日したとき、マスコミ関係の仕事をしている息子がお土産にプレゼントしたら、すごく喜んでもらったって。ここでしか売っていない東京こけしだけど、世界中に出回ってるんだよな」
薬王院の大僧正に購入され、お祭りの視察に訪れた皇族の方に進呈したこともあるそうです。東京こけしに対する注目度の高さがうかがえますね。
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東京こけしハピネスリング(東京こけし販売店)
〒192-0066
東京都八王子市本町2-11-12
TEL:042-622-2978
営業時間:10:00~19:00(不定休)
京王線京王八王子駅徒歩15分
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掲載日付:2008/02/06