カメラを持って「井の頭公園」に行けば、判で押したようにいつも、
池に浮かぶスワンボートの写真を撮ってしまう。撮りながら、そのデザ
インは少々甘ったるいように思っていた。しかし、去年の冬、沢山の野
生の白鳥を、手をかまれそうなくらいの距離で目にする機会があって、
スワンボートの形や進行速度は、なるほどなかなかリアルに白鳥をあら
わしたものなのだとわかった。ただし、目に限っては、カールした睫毛
は生えてはいない。ただただ、つぶらな目をしている。
実際、近くで見た白鳥は、アクセサリーのモチーフになったり歌に歌
われたりしている姿ほど、ロマンチックな鳥ではないのだった。静かに
泳いでいるのを少し離れて眺めているぶんには、そのイメージどおり、
「優美」「上品」などの言葉が似合いはするものの、水から上がると、
真っ黒で丈夫そうな足はあたかもゴム長靴を履いたよう、鳴き声はけた
たましく、長い首はユーモラスな動きをする。とはいえ、そういうとこ
ろもひっくるめて、見ていて飽きない鳥である。
まだ白鳥はシベリアに帰っているし、どのみち冬になっても東京まで
は飛んでこないから、やっぱりここに来る度、私はスワンボートを撮る
だろう。
同じく水鳥でも鴨のボートはないのは、白色のほうが水面に映えるか
らか。
掲載日付:2007/08/29