この記事は前編と後編に分かれています。
前編をまだお読みでない方は、まず
前編からご覧ください。
<前編の内容>
●知恵を絞って映画の世界観を空間で表現する
●ほとんど資料のないところから作り上げた時代劇の風景
●登場人物の気持ちを考えて空間を作る
脚本から場面のイメージを作り上げる美術監督の仕事。基本は脚本通りに作っていくものなのですが、木村さんはそこから一歩踏み込みます。
「例えば、『千利休 本覺坊遺文(1989)』という映画で、千利休の弟子のお坊さんが年1回師匠の遺徳をしのんでお茶を立てるシーンがあったんだけど、そこの脚本のト書きには『薄汚れた部屋』と書いてある。ここで、私はその部屋の畳だけは新しくしてみたんだよ。本来なら、部屋が汚れているなら畳も汚れているものだけれど、この弟子なら、きっと普段は京の街に出てお布施をいただき、貯めたお金で年1回畳を新しくして、まっさらな気持ちになって師匠をしのんだんだろうなあと思ってね」
登場人物の気持ちを読み取り、その目線で背景を作り込んでいく木村さん。しかし、そこまで考えて仕事をするようになったのは、70歳頃になってからなのだとか。普通のサラリーマンではとっくに定年を迎え、穏やかな老後生活を送っている年頃。経験とともに感性が進化し続けていく姿には、思わず圧倒されてしまいます。
●86歳にして映画監督としても活動開始
さらに2004年には、木村さんは86歳にして初めて、映画監督として短篇映画の撮影に挑みました(写真-中)。これが映画界で話題となり、2007年には調布を舞台にした長篇映画に挑戦することに。
「調布駅前の広場を書いた『こぶ広場(仮)』という自作の小説をプロデューサーが読んで、私の知らない間にシナリオにしてしまったんですよ。しかもその脚本で、運良く文化庁の助成金をもらえることになってしまってね。じゃあ、撮ろうかということになったわけです」
この映画の主演は長門裕之さんと有馬稲子さん、そして若い世代は宮沢りえさん、井上芳雄さん(写真-下)。調布駅前の広場が舞台というだけあって、調布グリーンホールや、駅前広場が映画の中に何度も登場するのだとか。
「映画監督というのは、美術監督と違って、俳優さんに演技の指示を入れなければいけないのが難しいね。俳優さん自体がどんなに演技がうまくても、自分のイメージする世界と違っていたらやりなおしてもらわなければいけない。石膏ではなく、生きた人間が相手だから、そこが苦労したよ」
撮影は2007年4月に無事終了し、現在は映像を編集中。一般劇場公開は2008年春の予定ですが、2007年秋からは調布グリーンホールでも特別試写会が行われるそうです。試写会もしないうちから、早くも劇場からの上映オファーが来るほど注目を集めているそうです。
●いつまでも精力的な、若さの秘密
年を重ねるにつれて、ますますパワフルに制作活動を行う木村さん。その若さの秘密は、若者との交流なのかもしれません。
鈴木清順監督をはじめとする日本映画の名監督と仕事をするだけでなく、若手の監督とも積極的に仕事をしています。
「若い人は私が突拍子のない発想をしても、おもしろがって乗ってくれる人が多いから、一緒に仕事をしていて楽しいね」
若手監督の作品は、どうしても低予算になりがちですが、その低予算の中で知恵を練るのがまた楽しいといいます。
ほかにも日活撮影所内にある、日活芸術学院では学院長を務め、自らも教壇に立ち、後進の育成にあたっています。
「生徒の卒業製作の上映会が調布市の文化会館で行われるんだけど、みんないいものを作るんだよ。いろいろと工夫をこらして頑張ってるね」
映画の街、調布。
調布駅周辺は、駅前広場だけではなく、路地裏など思わぬ場所がロケに使われていることも多いと聞きます。
スクリーンで見た風景を頭に思い浮かべながら、付近を散策してみるのはいかがでしょうか。
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日活撮影所
〒182-0023
東京都調布市染地2-8-12
TEL:042-483-1514
京王線布田駅より徒歩15分
京王線調布駅よりバスで10分
URL:http://www.nikkatsu.com/
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掲載日付:2007/05/22