京王線特急で新宿から約15分の位置にある調布。ここは撮影所や数々の映画関連企業が集まった「東洋のハリウッド」と呼ばれる映画の街です。
そもそも、調布はもともと近くを流れる多摩川の澄んだ水がフイルム現像に適していたことや、多摩川の川面や土手、武蔵野の自然がロケ地として活用しやすいということで、映画づくりに適した土地柄なのです。
特に調布駅からバスで10分という位置にある日活撮影所(写真-上)では、数多くの映画が作られ、そこから日本映画界を支える名監督や大スターが生まれました。
ここで約60年間、映画の美術監督として活躍し続ける木村威夫(たけお)さんが、今回の「達人」です。(写真-中)
●知恵を絞って映画の世界観を空間で表現する
美術監督の仕事は、映画のイメージに合った空間を作ること。最初に脚本を読み、どこの地方が舞台なのか、それとも全く架空の世界なのかを確認したあと、イメージに近い場所を1~2か月間かけてロケハンします。
「ロケハンをしながら頭の中でイメージを膨らませているときが、この仕事の一番の醍醐味だね。小さな居酒屋で一杯やりながら、あれこれ考えているときが楽しくもあり、半分苦しくもある段階なんだな」
その後イメージが固まれば、そのままロケ撮影をするのか、ロケ撮影に追加でセットが必要なのか、それともすべてセットを組み立てて撮影所で撮影してしまうのかなどを決めていきます。あとは図面を引き、具体的に大道具スタッフに指示をして、空間づくりが進められていくのです。
●ほとんど資料のないところから作り上げた時代劇の風景
木村さんは今まで約240本の映画美術に携わってきた、映画界では大ベテランといえる存在。手掛けた数多くの作品の中でも特に思い出に残っているものは何なのでしょうか。
「田中絹代さん主演の『サンダカン八番娼館 望郷(1974)』では、大変どころか途方に暮れてしまったね。舞台は明治のボルネオ島。当時の町並みに関する参考資料が見当たらず、とりあえず現地に行ったけれど、現代的なビルがずらりと並んで、まったく当時の面影が残っていない。でも、ふと入りこんだ横町で、小さな写真館のウィンドウに、太平洋戦争で焼け野原になった街の写真が貼ってあったのを見つけてね。焼け野原だけれど、道路や街灯は残ってる。だから『これだ!』と思って、じっとウィンドウに額をくっつけてその風景を頭に焼きつけ、ホテルに帰って記憶をもとに一心不乱にスケッチしたんだよ」
その後、その時代に電気や水道があったのかなど、暮らしの様子をさまざまな資料から調べ上げ、「明治のボルネオ島」の町並み、インテリアをすべて想像で作り上げていったのです。
まるでタイムスリップしたような過去の町並みでも、実は美術監督が想像で作り上げた世界だったりすることがあるのですね。
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日活撮影所
〒182-0023
東京都調布市染地2-8-12
TEL:042-483-1514
京王線布田駅より徒歩15分
京王線調布駅よりバスで10分
URL:http://www.nikkatsu.com/
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掲載日付:2007/05/22