先日友人と一緒に酒をのんでいた時に、近場で最近行ったどこか印象に残る場所はあるかなどと、たわい無い話が始まった。お互いにあの場所が~、こっちの方が~などと話しているうちに、友人が「そうだ面白い場所があるよ・・・」と話す。その場所は、八王子でしかも京王沿線の山田駅近くという。八王子は行ったことがあるが山田駅には下車していない。友人がたぶん行ったことのない場所だと思うよ!!と得意気に話す。「国道沿いに牛が放牧されている牧場があるのを知っているか?」と聞く・・・なに・・八王子のそれも国道沿いに牛がいる訳がないだろう?と半信半疑で聞いていると、一度自分の目で確かめて来たらどうだ?と言う。「じゃあ、見に行ってくるよ」という話になった。彼が地図を描いてくれるというので、小さ目のスケッチブックを渡す。地図を描きながら、「実は、ここでヨーグルトや牛乳も飲めて美味さは天下一品なんだよな~。行くと感動するよ」と彼は、嬉しそうに話す。やがて描き終えて「土産をたのむ」と言いながらスケッチブックを僕に返した。地図を見ると線を書きなおしたり、加えたり、曲がったりしている。これで大丈夫だろうか??
数日後、山田駅を降りて、友人の描いてくれた、やや不明確な地図のとおりに道を進んで行く。このまま行って着くのか?誰かに聞いて見ようかと思いながら、まあまあ交通量の激しい国道の歩道沿いに歩いていると柵越しに本当に牛がいたのだ。なぜか羊も……。
牛たちが悠々と草を食んでいた。大きな木の下で羊は寝そべり、なだらかな牧草地は思っているよりも広いらしく、牛以外さえぎるもののない視界は遠く多摩の丘陵地帯を見渡すことができ、その眺めは長野で見た牧場と同じような光景を彷彿とさせた。どこか懐かしいような、心休まる眺めである。
柵越しに見ている親子連れに聞くと丘陵の下に牧場の入り口があると聞いた。行き方は幾通りかあるらしいが僕は、国道沿いの坂を下り、牧場を目指した。しかし、その道は遠回りだったらしい。なかなか着かない。
なかなか着かないのも道理で歩いていると、つい小道があると僕は誘い込まれるようにそちらへと行ってしまう。近道になるんじゃないかという妙な期待が、僕をそうさせるのである。
季節は秋に変わり、夏の日盛りの頃とすっかり変わって、散歩をするのにもちょうど良い。たった一ヶ月前までは、やかましくセミが鳴いていたのに、今はリーンリーンやガチャガチャという虫の音に代わり、小道には熟した柿が落っこちている。木陰に入ると少しひんやりとした秋の風を感じる。
季節の移り変わりに心を奪われていたら、やっと、目指す牧場の看板を発見。「磯沼ミルクファーム」と描かれている。中へはいっていくと、生まれたばかりの子牛が牛舎でウトウトとしていた。むわんと牧草や牛糞の匂いが辺りに充ちているが、少しも不愉快ではない。懐かしさとむしろ都心の近くでこのような牧場があることに驚く。
ここはもともと農家で、40年くらい前から牛を飼っているのだという。現在のご主人は二代目で、約110頭もの牛が飼育されている。葡萄棚の下に小屋があり、そこで朝搾りの牛乳やヨーグルト、アイスクリームなどが売られていた。どれも自家製である。
葡萄棚の下にテーブルとイスが置いてある。イスに腰を掛ける。牛舎を見ながらのんびりとアイスクリームを食べる、普段あまり甘い物を口にすることは少ないのだが秋日和の日射しの中で食べるとうまい。
友人が言ったように来てみて良かったと思った。感動した。帰りは、雰囲気のある木立の中を抜けると広い畑に出た。此処にも「磯沼ミルクファーム」の看板があった。徒歩の場合は駅から牧場への近い道だったのだ。
掲載日付:2008/10/08