京王多摩川駅の改札を下りてすぐのところに「京王フローラルガーデン アンジェ」がある。ここは2002年に京王百花苑からリニューアルオープンした花と緑のガーデン施設で、日野市の「京王百草園」が和を基調とした庭園ならば、こちらは洋を基調とした欧風庭園だ。
敷地面積5000坪の園内は15のガーデンに分かれていて、一周回ることですべてのゾーンを楽しめるようになっている。まず、エントランスを抜けると、フランス印象派の巨匠、クロード・モネのパリ郊外にある自宅の庭を模したウォーターガーデンが訪れる人を出迎えてくれる。春になるとモネの代表作である絵画を彷彿とさせる睡蓮が咲き、その様子はまるで絵のなかに入りこんでしまったかと思われるほど幻想的であると言う。その他にもハナミズキ、ソメイヨシノ、カエデの木や手入れの行き届いたローズガーデンなど、季節ごとの花と緑を愛でることができる。もちろん庭園内はそれだけでなく、針葉樹で構成された、今話題の森林浴効果も期待できるコニファーガーデンや、いわゆるアロマセラピーの重要な要素である数々のハーブが植栽されたハーブガーデンがあり、すこし雰囲気の違うところでは、デイゴやサルスベリなどの熱帯植物を中心にサマーガーデンと銘打った、カナールサイドガーデンなど、趣向を凝らしたゾーンが目白押しなのである。なかでもこのアンジェの看板とも呼べる、マグノリアガーデンでは約30種類200本のマグノリア(コブシやモクレンなどの花木の総称。花期は3月中旬から5月上旬)が集められていて、日本ではこの場所ほど種類と言い、数と言い、コレクションされているところもめずらしく、花期の眺めは圧巻だと言う。
それもこれも人の手による厳しい管理下にあるから僕らはこの美しさを堪能できるのだ。というのも、僕がこの欧風庭園を散策していると、ロウンガーデンという芝生の広場で、5~6人のスタッフが手(・)で除草作業をしていたのだ。僕はこの光景を見て、ぐっと胸にきてしまった。除草剤などを用いれば手間をかけずに草取りは出来るのだろうけれど、このアンジェの方針は最低限、機械を使うこともあるが、基本は手抜き除草。そういう細やかな気配りが、美しいものをより美しくさせる大きな力だと僕は思う。本当にこの場所を大切にし、心を込めなければどんな作業だって中途半端でそれだけのものになってしまう。だから僕は今回アンジェを訪れて、花々や木々の美しさや欧風的魅力に心ひかれただけでなく、このアンジェという花と緑の空間を守り、慈しみ、多くの人々に愛される場作りにつとめているスタッフの努力や職業意識の高さに胸を打たれた。訪れて良かった。
ちなみにここは、その美しい景観をいかして、ガーデンウェディングをすることが出来るという。教会や式場とまた違った、花と緑に囲まれたウェディングも思い出に残る新しい結婚式の形となるだろう。
アンジェを出て、調布駅へと向かう途中に角川大映撮影所があった。門扉のまえでは、「出待ち」をしている若い女子たちが一列に並び、撮影所から出てくるであろう俳優を待っているようだった。みんなちっとも待ちくたびれた、なんてつかれた顔などしていなくて、一様に期待に満ち溢れた輝く顔をして一心に構内を見つめていた。この熱意はまさに若さのかたまりだなぁなんて思いながら通りすぎる。すぐ前方には青果店があって、昔ながらのたたずまいのなかに新鮮で良心的な価格の果物や野菜がいっぱい! ここは飛び込まずにはいられないとばかりに僕は店内に入る。
アンジェで眼福したあと、今度はここで腹を満腹にさせなければ、とばかりに僕は買い物カゴを取ったのだった。
掲載日付:2008/07/23