改札を抜けて広がる大通り。そこは街と駅とを結ぶ大きな架け橋のように見えた。この道はまっすぐパルテノン多摩へと続いている。
パルテノン多摩とは多摩丘陵の歴史を学んだり、コンサートやオペラ、演劇などのイベントの鑑賞やイベントなどが体験できる複合文化施設である。そしてまた、10万㎡の緑にかこまれた多摩中央公園の玄関口でもある。僕はパルテノン多摩内にある歴史ミュージアムで郷土資料を見たあと、多摩中央公園を散策することにした。身の丈を越す階段を仰ぎ見ながらゆるゆるとのぼる。梅雨の中休みとあって、雨こそ降ってはいないものの、空はどんよりと重たい。階段の中央に作られた大きな花壇のなかでビヨウヤナギの黄色だけが元気一杯に咲いている。
驚いたのは階段をのぼりきった後のことだった。どこまでも続く芝生の緑、空に向かって吹きあがる噴水。悠々と旋回する鳩の群れ。想像を超えた広さに、この街の特色を見た気がした。いずれも空間的余裕をたっぷり取っているのである。だから都会のどこにでもあるようなごちゃごちゃとして緑もあるのかないのか、鳥もカラスしかいないじゃないか、などというのとは違って街は広くゆったりとし、近代建築が並んでいてもそれらは緑を侵すことなく、都内でもめずらしく野鳥が飛来し、憩いを求めにやってくる人々の目を楽しませる。まさに時間に追われることなくゆったりとした気分で街を歩くにはうってつけの場所なのだ。
ぐるりと園内を回ると旧富澤家住宅という旧宅があって、代々この地で名主を務めた富澤家の暮らしと18世紀中ごろから後半にかけて建てられた住宅建築を見学することが出来る。庭園の池には亀の親子が曇り空もなんのその~と甲羅干しをしている姿が微笑ましかった。元治元年(1864年)に建てられたという表門をくぐり抜けてまた緑の散歩道を歩く。
歩く間もなく現れたのは温室。ここは多摩市立のグリーンライブセンターというところで、多摩に住む人々に園芸や庭作りの提案をコンセプトに開かれた植物園である。専門職員による相談コーナーが設けられ、講習会等も充実しており、花や緑が好きな人もこれから花壇や庭をアレンジしたいという人にとっても気軽に相談や体験できる開放型の施設だ。もちろん僕のようにたまたま通りがかって、多種多様な花や植物をみるだけでも十分に楽しい。実際僕も中学生の頃は、サボテン収集と栽培に夢中になって、新しい品種を取り寄せたり、自分で交配させて新種を作っていたりしていたことがあった。ここへ来てそれを思い出し、懐かしい気分になる。
「街中に緑を増やす」ということは、そもそも公園や街路樹を増やしたり豊かにさせるばかりでなく各家庭からもっと緑を増やしていこう、ということなのだろう。それに熱心に取り組もうとする行政のアイディアを僕は面白く思った。なかなかすてきな取り組みだと思う。
そして最後に訪れたのは東京都埋蔵文化財センター。サンリオピューロランドのすぐそばにある。ここは多摩ニュータウン開発や都内各地で発掘された土器や石器類などの出土品を中心に収蔵・展示している施設で、展示ホールでは年に一度テーマを決めて展示替えを行っている。僕が訪れたときは「縄文人に会いにいこう」がテーマで、その生活ぶりや衣服や装飾品などが分かりやすく展示され、別室では彼らが着ていたとされる麻などで丁寧に織られた衣装にも実際に袖を通すことが出来た。
鬱蒼とした緑に囲まれた遺跡庭園内の復元住居。原始的な生活を送っていた人々の暮らしに思いを馳せながら、一歩外へ出ると、そこは電車が走り、娯楽施設や文化施設、大きなデパートがある。時の流れをひしひしと感じさせる多摩センターは面白い場所だった。
掲載日付:2008/07/09