切り絵風景ハンティング/国領:街はぴライター 投稿記事

切り絵風景ハンティング/国領
【文化・歴史】【全線】
久保修」さんによって書かれた記事です。  
 国領に有名な千年乃藤という藤の大木があるという話を聞いたので、出掛けてみることにした。
 季節はだんだんと若葉の目立つ時期になっていた。つい最近までは車窓からあちこちに桜の木がその美しい花びらを咲かせている姿を見ることが出来たのに、今ではそのかわりに萌えるように新緑が芽吹いている。四季の移ろいを感じる瞬間である。  
 国領駅を降り、甲州街道をてくてくと歩く。この道もケヤキが一直線に続いている。歩行者が多いのは僕と同じで千年乃藤を見に行く人たちなのだろうか?などと考えながら歩いていると、藤の花が見えた。すごい!!! 話に聞いていたが、ここまですごいとは・・・。千年乃藤は国領神社の御神木である。樹高12メートル、幹まわりは1.8メートルもあり、藤の木を支える藤棚の面積は120坪、高さ4メートル。この藤の樹齢は4~500年で、人々は畏敬の念をこめて、千年乃藤と呼んでいる。以前はおとな二抱え以上のケヤキの木にからまり、甲州街道まで伸びて花を咲かせていたという。
藤の花は不二、無事に通じて、災厄を防ぐ御神木として人々から崇め奉られている。ちなみにこの藤の実が入ったお守りが花の開花とともに数量限定で頒布されていて、実が身を守る、実が生ることで心願成就としてなかなか人気が高いのである。藤の花は夜にはライトアップされ、妖しく美しい姿を闇のなかに浮かび上がらせる。数百年と生き続けるこの藤は街の変遷をどう見てきたのだろう。藤棚の下にいて甲州街道を慌しく過ぎて行く車の流れを見ながら、時の移り変わりにしばし思いを馳せる。
また、歩き出す。目的はない。甲州街道を徒歩(かち)で歩いてきた当時の旅人の気分になって、横を行き交う車はさながら飛脚や馬と勝手にイメージを膨らませつつ、気ままな散歩を続ける。
見えてきたのは布多天神社前という案内板。早速寄ってみることにした。
布多天神社は多摩地方有数の古社で、創建は古すぎてわからないと寺の人は言う。なんでもわかっているのは、延長5年(927年)に制定された「延喜式」という法典にその名を連ねているということである。ざっと千数百年。たしかに、古い。祭神は少彦名神と菅原道真である。
布多(田)と言い、調布と言い、この辺りは古代から麻や絹の生産が盛んな土地だったそうだ。もちろんその歴史は多摩川抜きにしては語れない。租庸調(そようちょう)という奈良時代の税法に則ってこの調布では布を朝廷に納めていた。ゆえに調布と名がつき、この辺りは武州調布の里として知られるところとなった。
この布多天神社にも布と関わりのある伝説が残されている。
延喜19年(919年)、中国から木綿の実が日本に伝わり、多摩川の農民の手にもその実がもたらされた。しかしどうやって布を織ったらよいのか途方に暮れていたところ、菅原道真の親戚すじにあたる一人の長者が神のお告げがあるようにと七日七晩布多天神社におこもりをした。七日目の夜にどこからともなく白髪の老人が現れ、布の織り方を教えてくれたという。教わった方法で布を織り、天皇に献上した。これが我が国の木綿のルーツだという。
たまたま散歩の途中で立ち寄った神社であったけれども、由来や由縁を知ると意外な事が学べて面白かった。散歩の醍醐味を感じる。
神社を出て、天神通り商店街を歩く。水木しげる氏のゲゲゲの鬼太郎とその仲間たちの像があちこちに置かれていた。一反もめんの像もあって、なぜだか鬼太郎よりも得意そうな顔をしてネコ娘をその背に乗せていた。 
掲載日付:2008/05/14
沿線ライター:久保修さん
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