切り絵風景ハンティング/府中:街はぴライター 投稿記事

切り絵風景ハンティング/府中
【文化・歴史】【全線】
久保修」さんによって書かれた記事です。  
桜の開花に誘われて街へ出ようと思い立った。
京王沿線にはたくさんのおすすめ桜スポットというものがあるようだけれど、今回はかねてより気になっていた府中に出掛けてみることにした。ちょうど「第37回府中市民桜まつり」というのが開催中であったことも府中へ足を向けた理由のひとつである。
駅を降り、大通りに出てまず驚いた。
圧巻のケヤキ並木である。おとな二人抱え、いや、三人抱えでも足りるのかと思うくらい、太くて堂々したケヤキの木が大國魂神社へ向かって一直線に続いている。天然記念物とのことだ。鮮やかな若葉が風に揺れて、和やかな気分になる。ケヤキに付けられた看板を読むと、ここは大國魂神社の参道であり、馬場大門のケヤキ並木と名付けられているそうである。平安時代の後期、康平5年(1062年)の「前九年合戦」で奥州を平定した源頼義・義家父子がケヤキの苗木千本を寄進したのがこのケヤキ並木の起源であるという。 
僕は桜を見るのをひとまず後まわしにして、先に大國魂神社を参拝することにした。
大きな鳥居をくぐると、木々の生い茂った参道が長く続く。静かで荘厳な雰囲気に満ちた立派な神社である。
この大國魂神社は、日本神話に登場する大国主命という神と同格の大國魂を護り神とした武蔵国の総社であり、その創立は景行41年(111年)、約1900年前であるというからその由緒には目をみはるばかりである。例えばこんな話が残っている。鎌倉幕府を制定した源頼朝が、妻の北条政子の安産を願って、彼の重臣であった葛西三郎清重を使節として遣わしたとか、徳川家康が江戸入城の際、この大國魂神社に神領地500石を寄進し社殿及びその他の造営を行なったなど、歴史上の人物との関わりの深さを物語る資料が多数残っており、境内からはその歴史に裏付けられた圧倒的な存在感というものがひしひしと伝わってくる。
生い茂る若葉の間から降り注ぐ春の光を感じながら豊かな気分で歩いていると、前でわぁっという歓声が上がった。なんだろうと眺めてみると、白無垢と紋付袴姿の男女がいるではないか。神前結婚式が行われていたのだ。
しだれ桜の下に立つ二人は気恥ずかしさと嬉しさとが入り混じったような顔で記念写真を撮っている。それから続くように今度は十二単と衣冠束帯姿の二人が神官、巫女、雅楽とともに現れた。幸せ一杯のオーラを分けてもらった後、僕は桜並木を目指した。
ケヤキ並木沿いをまっすぐに進んで行く。つくづく思うのは、なんて木の気を感じるところなのだろう、ということだ。このケヤキ並木の迫力は行ってみないと分からないもので、それは大國魂神社へと続く参道ということもあり、また相当な齢を重ねているということもあってか、霊的なパワーを強く感じる。自然の持つ生命力の強さに身が引き締まる思いがするのだ。こんなに木に守られた土地が東京にあるとは思わなかった。住んでみたいとすら思い、道沿いの不動産屋のショーウィンドーを思わず覗いてしまう(笑)。
 そうこうするうちに桜並木へと着いた。やはり立派な桜並木だ。しかも住宅街である。提灯やぼんぼりが飾られ、夜はライトアップされるのであろう。桜は幾分散り始めてはいたが、青い空に桃色の雲のようにたゆたっていた。のどかな春の日である。歩行者天国をぶらぶらと歩きながら桜の花を愛でる。
 府中市民桜まつりの会場では模擬店が多数並び、家族連れで非常ににぎわっていた。舞台ではお囃子や民踊、演芸発表などが催され、武蔵国府太鼓の生演奏もあるという。
桜の花をのんびりと眺めながら、ビール片手にゆっくりと花見をした。僕のことだから、飲みすぎてしまったのは言うまでもない……。
掲載日付:2008/04/23
沿線ライター:久保修さん
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